定年前後の夫婦が考えたい家計改善のポイント

2019.10.01 更新

日本人の平均寿命が延びています。厚生労働省が公開している2018年簡易生命表によると男性の約4人に1人、女性の約2人に1人は90歳まで生存していることがわかります。

定年前後の夫婦の場合、65歳でリタイアするとその後の人生が30年以上続くことを想定して家計を見直し、お金の流れをしっかりと管理しましょう。

「キャッシュ・フローの健全化」が重要!

年代を問わず、家計をなるべく長持ちさせるポイントは、「収入を増やす」「支出を減らす」「お金を働かせて増やす」の3つです。

定年前後の夫婦の場合、これらに加えて「家計のキャッシュ・フローを健全にすること」もとても重要なポイントです。

キャッシュ・フローとは、文字通り「お金の流れ」です。会社を経営する上でキャッシュ・フローが重要と聞いたことがあるかもしれませんが、家計運営でも同様に重要です。家計は社会の最小単位ですから当然ですよね。

なお、キャッシュ・フローを見える化したものをキャッシュ・フロー表と言います。キャッシュ・フロー表では、現在から将来までの家計の年間収支と予想されるイベント費用(家のリフォーム・車の買い替えなど)を計上して貯蓄残高がマイナスとならないようにチェックすることが重要なポイントです。

キャッシュ・フロー表は日本FP協会のウェブサイト「便利ツールで家計をチェック」からダウンロードできますので参考にしてみてください。

老後の収支を把握するには、ねんきん定期便をチェック!

老後の収入の大半は公的年金ですから、まずは夫婦の受け取り見込み額を把握しましょう。公的年金の受け取り見込み額は「ねんきん定期便」で確認できます。

ねんきん定期便は、毎年の誕生月前後に届きますが、年齢によって記載内容が異なります。50歳以上に送られてくるねんきん定期便には、老齢年金の種類と見込額(年額)が記載されています。

この見込額は現状の加入条件が60歳まで続く仮定のため、年収が下がった場合や60歳前に退職した場合には変わる可能性があります。

他には、退職金や民間の生命保険の満期金・個人年金についても受け取る時期と金額を確認しましょう。これらの収入と貯蓄の合計から毎月の支出と予想されるイベント費用を引いたマイナス額が必要な老後資金です。

多くの人は老後資金の備えが必要ですからマイナスになったとしても慌てることはありません。

また、前述の通り、キャッシュ・フロー表の各年で貯蓄残高がマイナスになる場合、黒字倒産を意味するので避けなければなりません。

家計を長持ちさせる3つの対策

次に、キャッシュ・フロー表の貯蓄残高をマイナスにしないためにできることを見ていきましょう。

対策1:収入を増やす

定年前後の夫婦の場合、夫は会社員で妻は扶養内でパート勤務の人も多いのではないでしょうか。夫が勤務する会社によりますが、50代半ばから役職定年で年収が下がる、60歳以降は雇用延長制度で更に年収が下がることを想定して、収入を増やすことを考えましょう。

妻の働き方を変える

妻が夫の扶養内で働いている場合、年収を100万円前後で抑えている人も多いのではないでしょうか?

筆者はファイナンシャル・プランナーとして50代主婦の方から働き方についてご相談を受けることが多いのですが、皆さんに共通する悩みは「扶養を考えて、いくら稼ぐのが我が家の家計にとってベストか?」です。

一口に扶養と言っても、税金、健康保険・年金などの社会保険、夫の会社の扶養ルールを含めて総合的に判断する必要があります。

定年前後の夫婦の場合、扶養にこだわりすぎないのも一考です。扶養とは夫が会社員であるからこそ利用できる制度です。健康状態や会社の状況で早期退職の可能性もゼロとは言い切れません。

であれば、妻は扶養を外れて社会保険に加入して働くことを検討してみましょう。妻が扶養を外れることで得るメリットは、老後に受け取る厚生年金が増えることと、傷病手当金をもらえるなど健康保険の補償範囲が広くなることです。

デメリットは、手取り年収が減ることや夫の税金アップ、夫の会社から扶養手当が出なくなる可能性があることです。これらを踏まえて夫婦で話し合いをしてみてはいかがでしょうか。

年金の受給を繰り下げる

公的年金は長生き保険と言われていますが、平均寿命が延びている中、生涯の定期収入があるのは心強いものです。公的年金を繰り下げ受給して受給額を増やすのも長生きリスクへの対応策と言えます。

例えば、夫婦で受け取る年金のうち妻の老齢基礎年金(国民年金)を70歳まで繰り下げした場合、受給額を42%増やすことができます。

平均寿命を考えると女性の方が長生きする可能性が高く、妻が残された時には遺族厚生年金を受け取ることになります。

遺族厚生年金は夫が受け取っていた老齢厚生年金の75%です。そこに42%アップした妻自身の老齢基礎年金を受け取ることができれば少しは安心できるのではないでしょうか。

ただし、繰り下げ受給をすることで家計のキャッシュ・フローがマイナスにならないか、また、想定より長生きしなかった場合、結果的に受け取る総額が少なくなる可能性も考慮して判断しましょう。

対策2:支出を減らす

家計の支出を減らすには、固定費の削減が有効です。固定費は、毎月決まって出て行く住宅ローンや生命保険料、通信費などです。これらを見直し支出を減らすことが可能か確認しましょう。

例えば、住宅ローンを借り換えることで総返済額や毎月の返済額を減らすことが可能かもしれません。借り換えにかかる手数料を考慮した上で、メリットがあれば検討してもいいでしょう。

退職金で一括返済を考えている場合、キャッシュ・フローがマイナスにならないか十分に考えて行いましょう。

生命保険については、家族の状況に変化があった場合には見直すことも必要です。子どもの教育費がかからなくなり今までのように大きな死亡保障は必要なくなるかもしれません。

また、医療保険は進化しているので加入時の保障は適当でないことも考えられます。生命保険は人生で2番目に高い買い物と言われますので、精査するには良いタイミングかもしれません。

また、今後も社会の情報化が進み、モノやサービスは便利になっていくことでしょう。所有せずにシェアするという暮らし方で家計の支出を減らすことも可能です。

例えばマイカーを所有せずカーシェアリングを利用することで維持費を下げることができます。キャッシュレス決済を利用するメリットなど新しい情報をキャッチするアンテナを立てておくことも重要です。

なお、退職金の受け取り方で納める税金を減らすことも一考です。退職金の受け取りは、一時金のみ、一時金と分割の併用、分割のみと会社によってさまざまです。

一時金で受け取れば「退職所得」、分割で受け取れば公的年金と同じように「雑所得」の扱いとなり、税金の計算が異なります。どの受け取り方が「お得か?」は家計のキャッシュ・フローを含めて考える必要があるので一概には言えません。

受け取り方を自分で選択できる場合、受け取り時の税金を少なくすることで手取り額が増えることも頭に入れておきましょう。

対策3 お金を働かせる(資産運用)

老後資金を貯めるためにiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用している人もいるかと思いますが、iDeCoの加入資格は60歳までです。老後の暮らしが30年以上続くことを想定すると、定年後も継続した資産運用が必要と言えます。

資産運用の基本は、長期・積立・分散です。たとえ退職金などまとまった資金が手元にある場合でも一括投資はおすすめできません。すぐに使う予定のないお金はコツコツ運用を続けていきましょう。

例えば、つみたてNISAを利用すれば毎年上限40万円、20年間で合計800万円まで積立投資を行うことができます。夫婦で合計1,600万円ですから十分な投資額ではないでしょうか。

つみたてNISAは途中で引き出すことも可能なので使い勝手の良い「お得なお金の置き場所」と言えます。金融庁が認めた運用対象商品の中から銘柄を選択できるところも安心できるところです。

最後になりますが、投資をするのは気が進まないと預貯金にしている場合にもリスクがあることを知っておきましょう。

例えばインフレになり物価が上昇するとお金の価値は目減りします。今まで100円で買えていたものが120円になると、1,000円で購入できる量は減ります。

ですから資産の一部を預貯金以外でインフレ時に強い株式にしておくなど対策が必要です。

以上、定年前後の夫婦が考えたい家計改善についてお話ししてきました。夫婦は家計の共同運営者ですから、よく話し合いをして今後の人生を有意義に暮らしていけるよう協力していきたいものですね

執筆者情報

三原由紀
ファイナンシャルプランナー。50代前後の「プレ定年世代」に向け、10年後も幸せに暮らすための資産運用・家計管理サポートを得意とする。個別相談や各種セミナーは「無理せず、すぐに実行できる」主婦目線でのアドバイスを徹底している。

Blog https://ara50fp.com/

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