妻が熟年離婚を考える前に知っておきたいお金の知識と準備

2019.10.08 更新

「熟年離婚」についての相談が急激に増えています。

東日本大震災の後、結婚情報誌が意識調査をしたところ、約4割の人が「震災後結婚をしたいと思うようになった」という調査結果がありました。

未曽有の恐怖と混乱の中、大好きな人に寄り添ってもらいたかった。その様な現象ですね。

その反対に今、なぜ熟年離婚が多くなっているのか。筆者が相談業務を通じて感じたことを中心に、離婚後の生活で必要となるお金の内訳や、準備するべきことをお伝えいたします。

熟年離婚の相談が増加中

人生、特に大きな決断をする際には大義名分が必要でしょう。離婚問題に悩む相談者と話すなかで、私が肌で感じた『熟年離婚の大義名分』は下記の通りです。

  • 令和の時代になった。新しい時代は、自分らしく生きたい
  • 人生100年時代、後半は自分の為に生きたい

熟年離婚の場合は、大抵の場合は妻から言い出すことが多いと思います。夫も同じような事は考えているのですが「浮気をする」という方法で、その気持ちの処理をするからです。

最近は女性でも「浮気」をする人は大勢いますが、浮気する=離婚したい理由には至りません。女性は、もっと深いところで離婚を捉えています。

また根が真面目な女性は、好きな人ができても二股をかけられなかったり、夫に申し訳なかったりと思うようです。

妻が「離婚をしたい」と思うきっかけは主に3つです。

  1. 夫の浮気
  2. 夫との性格の不一致
  3. 自分に好きな人ができた

上記に、子供の成長が絡んできます。「子供が大学に合格したら」という妻も多いようです。

熟年離婚、決断前に考えたいメリットとデメリット

結婚生活も20年前後、年齢も50代前後と、熟年離婚に関する相談者の多くは精神的にも落ち着き、決断力も十分に養われています。

浅はかな気持ちで相談をしていない分、時間をかけて積み重ねてきた「離婚」への気持ちは強いです。

しかし、ご本人の気持ちの部分だけをフォーカスして、離婚を決断するのは非常に危険です。

「嫌な夫と別れれば、それだけで幸せになれると思う」等という安易な考えでは済まされません。

それでは「離婚破綻」を起こして、経済的に貧困となり、幸せなはずのシングルライフが崩壊しかねないからです。

もちろん「メリット・デメリット」で物事を決めたくない女性もいます。筆者自身がそうでした。

しかし、そうではなく、自分の生活を守ることは大人の流儀。日々の生活を差し置いて、人生は語れません。

ですからしっかりと、「離婚した場合」と「離婚しなかった場合」を比較検討して、決断に踏み込んで頂きたいと思います。

熟年離婚にはお金、身体、心の準備が必要

離婚をする時に、いくつか判断基準があります。

  1. からだは健康か(精神疾患含む)
  2. 自分の身内に介護等を必要としている人間はいないか
  3. 一生住む場所には困らないか

まずは、この3点が重要です。例えばからだの問題。

持病や現在治療中の疾患があったり、虚弱体質だったりする方は、離婚に踏み出すのはよく考えて下さい。

特に夫が厚生年金加入者の場合は、会社の健保組合から何かしらのサポートを受けている場合があり、離婚後はそのサポートが受けられなくなります。

呼吸器疾患などの持病がある方は、万が一夜中に発作が起きた時、嫌いな夫でも助けてくれます。

筆者のご相談者さまで、ベランダで脳梗塞を発症し倒れ雨に打たれていたら、5分もしないうちにたまたま夫が帰宅し、一命を救われたというケースもありました。

とにかく、自分もだんだん老いていく、からだの自由が利かなくなること自覚しましょう。

介護問題も深刻です。

今の時代「老々介護」は当たり前になってきています。50代の方の親もまだ健在の場合が多い。

しかし、そこに介護が発生し、自分が介護をしなくてはならない場合は、離婚をすることはよく考えた方が良いでしょう。

介護は簡単ではありません。自宅という逃げ場があるから救われる場合もあります。

住む場所について、「実家がある」という考え方は危険です。あなたが住んでいた頃の実家と今の実家では生活が変っています。

男兄弟の家族が同居している場合もあるでしょう。「いつも遊びに行っていますから」という方が多いのですが、それは「お客様だから」居心地が良いだけです。

例え自分の両親でも、20年近く別に暮していたら赤の他人同様。生活スタイルが変化していますから、あなたの居場所はないかもしれません。そこを客観的に考えて下さい。

上記3つの他に、子供やペットがいるのか。仕事や収入はあるのか。精神的に強くて、協調性がある性格なのか。様々な側面から冷静に判断する必要があります。

熟年離婚後の生活設計と年金

熟年離婚後の人生は長いです。人生の後半へ向かって、卒婚の意味を含めて離婚をすることも1つの道だとは思います。

しかし、人生後半の道は、体の衰えや老後のお金の問題が付きまとうでしょう。今年の6月に「老後2000万円問題」が炎上したのは記憶に新しいと思います。

夫婦二人で暮らしていても「老後のお金が足りない」と言われるご時世です。一人暮らしだから経費は半分とはいかず、2割減位にしかなりません。

老後の収入の柱は年金です。離婚した場合と、離婚しない場合、どの程度の違いがあるのでしょうか。

<日本の公的年金制度>

上記は日本の公的年金制度の図です。まず、皆さまはご自身と配偶者がどこに属する「被保険者」かお分かりですか?

  • 第1号被保険者 自営業やフリーランスなど。国民年金加入者
  • 第2号被保険者 会社員・公務員など
  • 第3号被保険者 第2号の専業主婦

この保険の加入種類で、もらえる年金や配偶者が亡くなった際に受け取れる年金が変ります。

年金を建物で考えた場合、1階は全員が加入する「国民年金」(基礎年金)部分となります。厚生年金受給者も会社から支払われています。

2階は「厚生年金」となり、会社員しか受給できません。会社員の妻は1階の「国民年金」部分だけとなります。

年金分割だけでは老後のお金は足りない

離婚による「年金分割」を離婚後のお金の一部として、考えている人も多いことでしょう。しかし、この「年金分割」にはルールがあり「これだけしかもらえないの?」とアテが外れるという話をよく耳にします。

~年金分割のルール~

  • 1階の「国民年金」(基礎年金)部分は、分割対象とならない。
  • 2階の「厚生年金」が対象となるが、年金額が「半分」になるわけではない。婚姻期間中の厚生年金記録が相手方の年金記録へ移管される。
  • 年金額の按分は「妻→夫」ではなく「多い→少ない」となる。

※年金記録をベースに年金の受給額が決まります。

~合意分割制度~
夫婦の話し合い、または裁判所の決定で按分されます。

~3号分割制度~
平成20年(2008年)以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間における配偶者の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割できます。

※請求期限は離婚後2年以内です。

~年金情報通知書~
夫婦の年金記録を調べる為の通知書です。相手方には知られないで取得できます。

夫1号 受給できる年金 離婚時の年金分割
妻1号 夫:国民年金+妻:国民年金
死亡時:お互い一時金+18歳未満の子がいる場合「遺族基礎年金」
妻死亡/一時金+55歳以上の夫は「遺族厚生年金」
なし
妻2号 夫:国民年金+妻:厚生年金
死亡時:夫死亡/一時金+18歳未満の子がいる場合「遺族基礎年金」
妻死亡/一時金+18歳未満の子がいる場合「遺族基礎年金」
妻→夫(厚生年金部分)
夫3号 受給できる年金 離婚時の年金分割
妻1号 夫:厚生年金+妻:国民年金
死亡時:夫死亡/一時金+「遺族厚生年金」
妻死亡/一時金+18歳未満の子がいる場合「遺族基礎年金」
夫→妻(厚生年金部分)
妻2号 夫:厚生年金+妻:厚生年金
死亡時:夫死亡/一時金+「遺族厚生年金」
妻死亡/一時金+「遺族厚生年金」
収入多→少
(厚生年金部分)
妻3号 夫:厚生年金+妻:国民年金
死亡時:夫死亡/一時金+「遺族厚生年金」
妻死亡/一時金+18歳未満の子がいる場合は「遺族基礎年金」
夫→妻(厚生年金部分)

※夫第3号は割愛。
※国民年金の一時金は「老齢年金」または「障害者年金」を受給していない人が亡くなった場合。
※「遺族年金」は遺族の年収850万以上の場合は受給できない。
※「1人1年金」のルールで、遺族年金は自分が老齢年金を受給する際は選択となる。

夫婦の働き方(年金の種類)により、受給できる年金内容が違います。離婚する場合としない場合の受給できる年金や年金受給額を事前に調べておきましょう。

離婚後のお金はもらえる額より必要な額を

ビートたけしさんの離婚時の慰謝料が話題となりました。

数十億、いや百数十億という金額で話題となっていますが、通常はそんなにもらえません。裁判所が介入したら、より金額は少なくなるでしょう。離婚後の人生はとても長いのです。

もらえるお金にエネルギーを注ぐより「ライフプランニング」というお金のシミュレーションを行い、離婚後に必要なお金を試算して下さい。

一番大切なことは「離婚をするしない」よりも、あなた自身が「幸せになる」ことだと思います。しっかり準備をして、リサーチしてからでも、離婚の決断は遅くないと思います。

執筆者情報

寺門美和子
夫婦(パートナー)間の問題解決、女性の自立支援を得意とするファイナンシャルプランナー。人生100年時代を幸せに生き抜くために、相談者が抱える不安や悩みを「身体的」、「精神的」、「社会的」といった側面でのアドバイスを通じて取りのぞく。

Blog
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Twitter
@MIWAKO4649ALOHA

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