夫ががんになった時に妻が考えるお金のこと

2019.10.24 更新

2人に1人が生涯のうちにがんになる時代です。夫婦の場合は当事者か当事者の家族となる可能性があります。

働き盛りの夫が突然がんになったら妻として何をしたら良いでしょうか。

病院でお受けしているがん患者さんやご家族の家計相談を基に、がんになったときのお金の考え方をご説明します。

がんと診断されたらまずは身体の情報収集を

がんと診断され、ご相談にいらっしゃる患者さんやご家族の多くは「治るのか?」「これからどうなるのか?」「治療費はいくらかかるのか?」といった漠然とした不安を抱えています。

国立がん研究センターの「がん統計」によると、がんの5年相対生存率は62.1%と上昇してきていますが、診断時に万が一のことをイメージされる方も少なくありません。

告知された時には頭が真っ白になってしまい、医師からの説明の記憶に残っていないという方もいます。

しかし、今後の治療生活を安心して過ごしていくためにはこの時期に正しい情報を収集できるかどうかが重要となってきます。

家族がまずできることは、医師からの説明の場に同席することです。一緒に説明を聴くことで安心感を得られます。

そして病状と今後の治療の流れ、治療の影響が仕事や生活レベルで起こり得る内容をご本人と一緒に確認し、メモなどに残しておいて帰宅後に家族で今後のことについて話し合えると良いでしょう。

身体の状況と生活や仕事は直結しています。仕事が継続できるのか、休職するのかによっては収入や利用できる制度も変わってきますので、きちんと情報整理できるようサポートしていくことが大切です。

「医師に聞いて良い質問なのか?」「何を確認していけば良いのか?」という漠然とした不安を抱えている方は、病院のソーシャルワーカーに確認してみると良いでしょう。

【医療費の試算と手続き】健康保険証を確認しましょう

標準治療(健康保険適応内の治療)であれば「高額療養費制度(健康保険制度の一つ)」により高額な治療費がかかっても、おおよその1ヶ月の上限が決まっています。

ただし、上限は所得に応じているので、同じがん治療でも1ヶ月の治療費は人により異なるのです。

病院の窓口で提示する健康保険証を確認し、記載の窓口で「限度額適用認定証」を申請しましょう。高額な医療費がかかったとしても1ヶ月の上限までの支払いとなります。

限度額適用認定証が無いといったんは立て替え払いをすることになり、大きなお金が動くので大変です。

会社の健康保険組合の場合はホームページで確認してみると、高額療養費に加えて組合独自の給付があるかもしれません。

つまり同じ所得で同じがん治療を行ったとしても、加入している健康保険によって自己負担の治療費が変わってくる可能性があるのです。

高額療養費がわかれば1ヶ月当たりの治療費×予想される治療期間(医師の説明)で試算してみましょう。

健康保険対象外の費用も忘れてはいけません。入院であれば食事代や個室の差額ベッド代、入院生活に必要な身の回りのお金などもかかってきます。

通院治療であれば交通費もかかります。治療や病状によっては、さらにウィッグや弾性ストッキング、人工肛門の装具なども必要です。事前に情報収集しておきましょう。

【制度と働き方】収入を確保しましょう

「休職したい」「退職し休みたい」「回復したので再就職活動をしたい」など体調や目的、加入している社会保険制度により利用できる制度は異なります。

例えば会社員や公務員であれば休職中の生活保障である「傷病手当金(健康保険制度の一つ)」があります。

傷病手当金は、例えば30万円収入があった方ですと、2/3の20万円×要件を満たしていた場合最長1年6ヶ月間=最大で360万円受給が可能です。

民間の医療・がん保険ではこれだけの保障内容を準備するといくら保険料がかかるでしょうか。利用できる公的な制度にたどり着けるかどうかで支払う金額に差が生まれます。

また生活や仕事に支障があるほどの病状や治療の副作用、後遺症が一定期間残っている場合、「障害年金(年金制度の一つ)」が利用できる可能性もあります。

公的な制度は申請して審査に通ることではじめて利用できます。人それぞれ利用できる制度は異なることから、患者さんやご家族から「制度を検索することが大変」という悩みも寄せられます。

このような時には、制度の検索無料サイト「がん制度ドック」(http://www.ganseido.com/)を活用すると良いでしょう。ご家族の方が行う場合は、患者さんご本人の情報で検索しましょう。

申請に不安な場合は、病院のがん相談支援センターやがん患者の相談に慣れている社会保険労務士にご相談されると良いでしょう。

がんと診断されたあと、働き方の選択は収入に直結します。連動してキャリアプランにも影響してきますので、情報収集して検討していきたいところです。会社員や公務員の方は職場で「就業規則」も確認しましょう。

働き方などのルールブックのようなもので、有給休暇や休職規定などが書かれています。時差出勤や在宅勤務、病気休暇があれば、治療スケジュールと体調に合わせた働き方のヒントになるかもしれません。

他にも主治医から産業医や直属の上司、人事課と働き続けるための書面のやり取りしてもらう方法があります。

自営業者は会社員や公務員と比べ利用できる制度も少なく、代わりがいないことも多いので、早めに業務の判断が必要です。

「代わりがいる業務」「時間がかかっても自身で行う業務」を治療スケジュールや体調の予測をしながら早めに選別していくことが必要です。

【安心した治療生活を送るカギ】今までの収入との差額をどう埋めるかを考えましょう

治療費と治療中の収入についてご説明しましたが、大切なのは患者さんを含めた家族が生活を維持することです。

家計管理の面でもサポートしていけると、ご主人も安心して治療に臨めるでしょう。

大切なのは、今までの給料と治療中の制度で得るお金、または治療中の減少した収入の差額を知ることです。

今の支出を、治療のために減る収入でやりくりできるのかを試算してみましょう。

家族構成や生活費により、毎月かかっている支出は人それぞれ

がんが発覚して、今後の支出を減らしたいとき、食費や光熱費の節約は大きな負担を強いられます。まずは住宅費や生命保険料、会費関係など毎月固定でかかる費用を見直すと良いでしょう。

見直す際には冒頭でもお伝えした「がん治療のスケジュール」が重要となってきます。どの位治療が継続するのか、体調の予測から仕事の継続や収入の状況が変わってきます。

収入の予測が立たないと固定費の支払いの目途が立ちにくくなり、例えば住宅ローン返済の選択肢の一つである「金融機関との支払額の交渉」の説明材料が足りません。

固定費の選択肢は大きく変わります。資産価値の見極めや、金融知識を必要とする場合は、がん患者相談に慣れているファイナンシャル・プランナーに相談することをお勧めします。

がんに罹患したとき、1番近くにいるご家族は数多くのサポートが可能です。しかし同時に「家族は第二の患者」と言われるほど、気持ちの面でも生活面でも負担が大きくなります。

上手にリフレッシュしながら抱え込まずに病院などの相談先を活用していくことが、安心した治療生活を送るカギとなります。

執筆者情報

黒田ちはる
ファイナンシャル・プランナー
10年を超える看護師の経験を生かし、国内初の「看護師FP(ファイナンシャルプランナー)」として2016年に独立。
主にがん患者とその家族に対する家計相談などを通じて、がん発覚後の悩み解消に向けたサポートを行う。

著書:『がんになったら知っておきたいお金の話』(日経メディカル開発)

ホームページhttp://fpkuroda.com/
Twitter @fpkuroda_nurse

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