任意整理とは?
任意整理とは、弁護士や司法書士などが間に入って、貸金業者などと借金額や返済方法について交渉し、和解契約を締結する手続きです。貸金業者と借金の減額交渉をするといい換えてもいいでしょう。
債務整理のなかで最も簡単で利用者も多い手続き
「債務整理」とは、貸金業者などと交渉することで借金問題を処理する手続きで、大きく「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の3種類があります。
任意整理はかかる費用や手間も最も少なく、生活への影響も少ないことから、債務整理をするほとんどの人は任意整理を選択しています。
任意整理は裁判所を介さないため、正確なデータが存在していませんが、他の債務整理と比べて断トツの利用者数であることは間違いありません。
借金の返済がラクになる
任意整理の手続きでは「将来利息のカット」によって借金を減額し、減額された元金のみを3〜5年にかけて返済していくという合意をします。
なぜ任意整理が借金問題の解決に有効なのかというと、「毎月返済しているのに借金が減らない」と感じるのは利息の返済に追われる状態に陥っているからです。
利息の支払いに追われ元金が減らない一例
元金100万円(年利15%)にかかる利息額は
100万円×15%÷365日×30日=約12,328円
となります。この場合、3万円を返済したとしても元金は17,672円しか減りません。
しかし任意整理によって利息をカットすれば、返済した分だけ元金が減り、完済への道が見えてきます。
また払い過ぎていた利息(過払い金)が発生していれば返金の可能性もありますし、交渉次第では借金自体の減額できるケースもあります。
裁判所が関与しないため債権者との交渉力が必要
任意整理は法的に認められた手続きですが、裁判所が関与しないため手続きにそれほど手間がかからず、デメリットも少ないといえます。
ただし債権者との交渉により借金の総額と月々の返済額が決まるので、交渉力がとても重要になります。そのため経験豊富な弁護士や司法書士に依頼するのが望ましいでしょう。
任意整理をするとどうなる?〜メリットとデメリット〜
任意整理は自己破産や個人再生と異なり、裁判所が介さないため複雑な書類を準備する必要がなく手続きが比較的簡単なため、メリットが大きいです。
しかし任意整理はメリットだけではなく、デメリットがあることも事実です。
任意整理を選択したら生活する上でどのような不都合が起きるのか、具体的なメリット・デメリットや、どのくらい借金が減るのかについてご説明します。
また生活が実際にどのように変わるのか、実際に任意整理をした方の体験談をみてみましょう。
任意整理のメリット
1.将来利息や遅延損害金をカットできる
先ほども少しお話ししましたが、任意整理の一番のメリットは将来利息や遅延損害金をカットできる点です。
消費者金融の金利は、大体年利15〜18%とかなり高額です。仮に100万円を年利15%で借り入れて3年間かけて返済すると、利息額は約25万円にも上ります。
借金そのものを減額するわけではありませんが、利息をカットするだけでもかなりの減額が可能です。
同時に任意整理では遅延損害金の支払いもカットできます。
遅延損害金は、期日までに借金を返済できなかった場合の損害賠償金です。消費者金融の場合、およそ年20%の利息が加算されます。
たとえば元金が100万円で3ヶ月間(90日)滞納した場合
100万円×20%÷365(日)×90(日間)=49,315円
もの遅延損害金がかかります。
利息や遅延損害金の支払いが免除されることで、借金の返済はぐっとラクになるでしょう。
任意整理の利息について詳しい記事はこちらから
2.借金総額(元金)が減額できる可能性もある
長い間消費者金融などから借金をしている場合、法で定められた上限を超える利息(過払い金)を払っている可能性があります。
任意整理の手続きで弁護士や司法書士は、過払い金が発生していないかを確認します。もし過払い金が発生していた場合は元金自体を減額します。
ただし、2008年以降は消費者金融なども法の上限を超えるような利息を請求しなくなりました。したがって任意整理で過払い金請求が行われるのは2008年以前から借金を続けていた場合に限られます。
元金の減額について詳しい記事はこちらから
経験者のコメント
任意整理の結果、過払い金が発生していたので230万円の借金が90万円にまで減りました。もっと早くに相談に行けばよかったと感じました。会社にもばれることなく、私も何もすることなく負担はありませんでした。
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3.3年程度の分割払いができる
任意整理では、原則的に3年間(36回)の分割払いにより支払います。場合によっては5年間まで可能です。
通常の借金は返済期間が延びると利息が加算され返済総額が増えますが、すでに将来利息はカットされているので、返済総額は変わりません。
返済期間を減らすことで月々の返済額が減り、負担が軽くなります。
経験者のコメント
夫に月数万円の生活費をもらって家計をやりくりしていたのですが足りなくなり、夫に内緒で借金をすることに…。気づいた時には借金は200万円まで膨らんでしまい、弁護士さんに相談しました。
任意整理をしてもらった結果、以前は毎月7万円の返済をしていましたが、半分の3.5万円になりました。自分のパート収入で十分返済できるので、今は夫に内緒のまま返済を続けていけます。
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任意整理のデメリット
1. クレジットカードやローンの利用ができなくなる
任意整理をすると約5年間、信用情報機関に事故記録として登録されます。いわゆるブラックリスト状態です。
ブラックリストに載ると、約5年間、ローンやキャッシングをはじめとした新規の借り入れが一切できなくなります。また、現在使用しているクレジットカードも利用できなくなります。
「借り入れできない」ということは、「借金をしなくて済む」ということなので、生活を見直すという点では逆に都合がよいかもしれません。
また借金を滞納してもブラックリストに載ることにはなります。「ブラックリストに載るのがイヤ」という理由だけで、任意整理を諦めてしまうのはもったいないといっていいでしょう。
ブラックリストの詳細はこちら
ブラックリストの登録期間はいつまで?あなたの借金を解決する方法
どうしてもクレジットカードを使いたいという人は…
「クレジットカードが生活に欠かせない」という人は、「デビットカード」や「プリペイドカード」といった代わりのカードを利用しましょう。
分割払いやリボ払いはできませんが、見た目も変わらず、ネットショッピングもクレジットカード同様に可能です。
2. 他の債務整理と比べて借金の減額幅が少ない
個人再生や自己破産の場合、借金の支払いの全額または大幅な減額が可能です。しかし、任意整理で減額できるのは原則、利息分のみです。過払い金が発生しない限り元金の減額はそれほど望めません。
そのため3年以内に元金の支払いも困難な場合は、個人再生や自己破産を検討する必要があるでしょう。
任意整理でどれくらい借金が減る?
では任意整理をするとどのくらい借金が減るのでしょうか。
ここでは実際に任意整理をして借金が減額できたケースを紹介していきます。
【解決事例1】
月々の返済額が9万円から4万円に!人並みの生活ができるようになった
≪任意整理前≫ |
借金額 |
180万円 |
毎月の返済額 |
9万円 |
≪任意整理後≫ |
借金額 |
130万円 |
毎月の返済額 |
4万円 |
返済中は満足な食事も取ることができず、そのため仕事でもミスが続くなど悲惨な毎日を送っていました。
それでも返済ができなくなり、弁護士さんに任意整理をお願いしたところ、借金額が減っただけでなく、返済期間を長くしたことで毎月の返済額が半分以下にまで減額。
今も決してラクではありませんが、食事もしっかり摂れるようになり、人並みの生活を取り戻せました。
【解決事例2】
返済の負担が減っただけでなく、督促の電話が止み平穏な毎日を取り戻せた
≪任意整理前≫ |
借金額 |
140万円 |
毎月の返済額 |
5万円 |
≪任意整理後≫ |
借金額 |
80万円 |
毎月の返済額 |
2万円 |
任意整理で借金が140万円から80万円までに減り、月々の返済も2万円になりました。
任意整理前は毎月返済日になったら、どうやってお金を工面しようか考え、精神的に追い込まれることも多々ありましたが、もうそんな心配はいりません。
まともな生活ができるようになって本当にうれしいです。もう二度と借金はしたくないという気持ちです。
任意整理と個人再生・自己破産の違い
債務整理には、任意整理の他に個人再生と自己破産があります。
この3つの違いの特徴とメリット、デメリットをまとめてみましたので、自分にとってどの手続きが適切なのかを検討する参考にしてください。
<特徴> |
任意整理 |
貸金業者と弁護士・司法書士の交渉によって、利息をカットして月々の返済額を見直す。 裁判所を介さないことなどから、リスクやデメリットが少なく、最も利用者が多い。 |
個人再生 |
借金が5分の1程度に減額できるが、条件が厳しく手続きに6ヶ月かかる場合もある。 |
自己破産 |
すべての借金をゼロにすることができるが、自分の財産も一部失う。 |
メリット・デメリットの比較
|
任意整理 |
個人再生 |
自己破産 |
家 |
残せる
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原則残せる
|
残せない
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裁判所に行く必要 |
ない
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あり
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あり
|
借金の減額幅 |
原則利息のカットのみ
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原則1/5まで減額
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ゼロになる
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保証人への迷惑 |
迷惑をかけない(※任意整理の対象から外す必要あり)(除外できる)
|
迷惑がかかる(返済義務が移行する)
|
迷惑がかかる(返済義務が移行する)
|
一部職業の制限 |
なし
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なし
|
あり
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手続きにかかる費用 |
目安:1業者につき5万円+減額報酬10%
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目安:70万円
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目安:70万円
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手続きにかかる手間 |
専門家に依頼すればほとんど手続きの必要なし
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裁判所への出廷などが必要
|
裁判所への出廷などが必要
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家族や会社にバレる? |
バレる可能性は少ない
|
家族にはバレる可能性がある
|
家族にはほぼバレる
|
このように比較すると、やはり任意整理は借金の減額は少ないものの、一番手続きしやすいことがよくわかるのではないでしょうか。
フリーターや主婦でも可能?任意整理の条件とは?
任意整理をするためにはクリアすべき条件があります。
しかし「借金が◯◯万円まで」「年収が◯◯万円」といったものではなく、ある程度の条件を満たせば、フリーターや主婦の方でも任意整理は可能です。
では任意整理ができる人、または任意整理をした方がよい人はどのような条件がいるのでしょうか。
1. 3~5年継続して借金の返済を続けられる収入がある
任意整理した後、貸金業者などに借金を毎月確実に払っていかなければならないので、ある程度の収入は必要です。無職の人や生活保護を受けている人は難しいでしょう。
フリーターや主婦の人が任意整理をするのは難しいかもと思うかもしれませんが、パートやアルバイト収入、または家族の収入から支払いが見込めれば問題ありません。
2.返済する意思がある
任意整理を選択するということは、自己破産や個人再生のように借金がそれほど減額されないけれど、「借りた原本はしっかり払いたい」という人でしょう。
3年~5年という長期の返済期間中に途中で挫折しないためには、「必ず返済する」という強い意志が必要なのです。
任意整理を選択する条件としては「3年~5年で返済できるか」「返済する意思があるか」がポイントとなります。
任意整理するなら専門家に相談を
多くの弁護士・司法書士事務所では、借金問題の相談を無料で行っています。
債務整理を専門としている弁護士や司法書士は借金問題のプロです。数多くの案件を扱っていますから、あなたの悩みに親身になってくれるでしょう。
誰にも相談できない借金の悩みは、専門家の力を借りて解決への糸口にしてはいかがでしょうか。
経験者のコメント
任意整理をして230万円あった借金が60万円減額できました。
減額できたことはもちろんうれしかったのですが、もうひとつよかったと思うことは借金の話をすることができたことです。
心の中に長年秘めていたストレスを話せる専門家に出会えたことで気分がすっきりしたのです。
話を聞いてくれる人の存在が何より重要なんだと思い知らされました。
詳しくはこちらをご覧ください
専門家に相談すべき4つの理由
任意整理は専門家の力を借りなくても手続きは可能です。
しかし専門家の協力なしに貸金業者と交渉するのは困難を極めますし、そもそも取り合ってもくれないケースが多いです。
ここからは任意整理の手続きを弁護士や司法書士に依頼するメリットについてお話ししていきます。
1.督促が止まる
弁護士や司法書士はあなたから任意整理の依頼を受けると、債権者(お金を貸している人)に対して「受任通知」という書類を送ります。
受任通知には法的効力があり、受け取った債権者はあなたに対して督促や請求などの連絡が一切できなくなります。
さらに受任通知が発送されてから任意整理手続きが終了するまでの間は、月々の返済を中断することも可能です。
悩まされ続けてきた取り立てや請求から解放されるため、任意整理手続きの中でも大きな役割を果たすといえるでしょう。
2.借金の状況を整理し、元金を減らせる可能性がある
任意整理の手続きの過程で弁護士や司法書士は利息を払い過ぎていないかを計算します(過払い金)。もしも過払い金が発生していた場合は元金を減らすことも可能です。
3.交渉力がある
専門家は豊富な知識を駆使し、返済額や返済期間など、個人では交渉が難しい条件の交渉でも、和解が可能になります。
4.必要書類の指示・書類作成の代行
弁護士や司法書士に依頼すると書類作成の多くを代行してくれますし、自分で集めるべき書類について指示してくれるため、スムーズに作成できます。
任意整理手続きの流れと必要書類
「任意整理をしようと思うけど、何から始めればいいかわからない」
任意整理はどのような手順で進めればいいのでしょうか。ここからは任意整理手続きの流れについて解説していきます。
任意整理の手続きにかかる期間は、1〜3ヶ月程度が目安です。ただし債権者が交渉に応じてくれない場合もまれにあります。
弁護士や司法書士に依頼すれば、あなた自身が行う手続きはほとんどありません。手続き期間中でも日常生活に支障をきたすことはほぼないといっていいでしょう。
任意整理の流れ|依頼者がすることはほとんどゼロ
1.専門家に電話やメールで相談・面談
任意整理手続きで最初にすべきことは「弁護士・司法書士探し」です。インターネットや電話で専門家とコンタクトを取り、相談時には債権者数や借入金額、返済期間、毎月の返済額などの債務事情を説明します。
2.任意整理の依頼
弁護士・司法書士が決まったら、正式に依頼契約をします。
専門家に依頼する際には、着手金が必要になります。1債権者につき2~5万円程度が目安です。分割払い可能な事務所もありますので、気軽に尋ねてみましょう。
専門家と依頼契約を結べば和解成立までの手続きは専門家が行います。あなた自身が行う手続きはほとんどありません。
3.債権者へ受任通知を送付
依頼契約が済んで即日〜2日以内に専門家が「受任通知」を債権者に送ります。
前述のとおり、送付後は督促が止み、返済のストレスから解放されます。
4.利息制限法に基づく引き直し計算
債権者との交渉に入る前に、専門家は取引履歴をもとに引き直し計算を行い、過払い金が発生していないかを確認します。
5.返済計画を立てる
引き直し計算によって正確な借金額がわかると、任意整理後の返済計画を立てます。
6.債権者との交渉と和解契約の締結
債権者との交渉は通常、専門家と債権者の間で行われます。交渉では将来利息のカットや残った借金を3〜5年の分割払いにすることに同意してもらい、和解契約を結びます。
ここで債権者は弁護士や司法書士から提出された和解案を破棄する権利はありますが、任意整理の交渉が決裂する危険はほとんどないといっていいでしょう。
というのも交渉が決裂すれば、自己破産などの措置を取るしか方法がなくなります。債権者にとっては自己破産で一銭も回収できないくらいであれば、元金だけでも返済してもらったほうが被害も少なくて済みます。
7.返済の開始
和解契約が締結されれば、残った借金の支払いが開始されます。返済方法は以下の2つがあります。
- 自分で各債権者に送金する
- 弁護士・司法書士を経由して送金する
弁護士・司法書士を経由して送金すると1,000円ほど費用が発生しますが、任意整理後の返済が遅れると「和解が無効になる」「一括返済を求められる」場合があります。
不安な方は弁護士・司法書士経由で送金するといいでしょう。
任意整理の流れについての記事はこちらから
任意整理手続きの必要書類
任意整理に必要な書類は以下のとおりです。
身分証明書 |
保険証やパスポート、免許証など |
印鑑 |
委任状や依頼契約書の作成に必要 |
収入証明書 |
給与明細や源泉徴収票など。会社に請求すれば発行してもらえます。 |
住民票 |
本籍が記載されているもの |
債権者一覧表 |
借金をしている業者名や借金残高、借り入れ期間などを記入 |
借用書・取引明細書 |
必ずしも必要というわけではありませんが、手元にあれば用意しておきましょう |
クレジットカード・キャッシュカード |
借入先のカードはすべて返却 |
預金通帳 |
銀行の預金通帳 |
書類は、弁護士や司法書士があなたの債務情報を的確に把握し、債権者との交渉をスムーズに進めるためものとなります。
そのため、必要書類とはいってもすべてを揃えなければ任意整理ができないというわけではありません。
用意できない書類があれば、気軽に弁護士・司法書士に相談してみましょう。
手続きにかかる費用
任意整理に必要な費用は弁護士や司法書士にかかる費用です。
その相場は以下のとおりです。
内訳 |
料金(目安) |
着手金 |
(1債権者につき)2万円〜5万円 |
報奨金 |
(1債権者につき)2万円〜5万円 |
減額報酬 |
(借金額が減額できた場合のみ)減額分の10% |
「任意整理の費用が払えない」と考える人も多いでしょう。
しかし、弁護士・司法書士事務所によっては分割払いに対応している事務所も数多くありますので、今すぐ支払うお金がないからといって任意整理を諦める必要はありません。
任意整理(債務整理)の費用についての記事はこちらから