国民年金保険料や借金の滞納で差し押さえの対象となるものと対策法

2017.12.16 更新

支払日にお金がなくて滞納が続くと、債務が増えるだけでは済まなくなります。適切な対応をとらなければ、強制的に差押えをされてしまうことがあります。土地や建物などの高価なものを持っていなくても、サラリーマンなら給料を差押えされる可能性があります。近年、国民年金の保険料や借金が払えない人は少なくありません。その場合の差押えとはどのようなものなのか、回避する方法はないのかなど気になる点を確認します。

滞納している債務によって差し押さえまでの流れと差押え対象は異なる

年金保険料や借金の滞納が続くと、差押えに行き着くことがあります。差押えは一般の人にとって馴染みのない事柄であり、大事な物を取り上げられるのではないかと不安にもなるものです。

国民年金の滞納で差し押さえられるもの

国の事業である国民年金制度における差押えは、一般的な借金での民事執行における差押えとは性格が異なります。つまり、制度への信頼性を維持し公平を期するとともに、確実な徴収を実施するために行われるものです。従って、差押えは滞納者の生活を考慮しつつ、他に手段がないときに実施し、引き上げや換価に便利なものを選定する必要があります。

さて、それでは実際に何が差押えの対象になるかです。原則として、財産と呼べる程度のものは何でも対象となり得ます。すぐに浮かんでくるのは現金や預貯金ですが、滞納している時点で多くは持っていないでしょう。差押える金額や物品の基準は、国税滞納処分の例によるため、国税を滞納している場合とほぼ同様です。よって、国税徴収法に定められた差押禁止財産に該当するものは差押えられません。

差押禁止財産とは、主に最低限の生活や仕事に欠かせないものを指します。一家の3ヶ月分の食料や燃料、鍋釜、タンス、衣類などですが、生活に不要なブランド物が必ず差押えられるとも限りません。引き上げ・換価に適しないと判断されれば対象外となるようです。

また、給与に類する金銭については、国税徴収法施行令第34条によって、10万円を基本とし、配偶者などの生計を一にする親族1名あたり4万5000円を加算した額が差押禁止財産となっています。一家4人なら23万5000円です。つまり、元がこれ以下であれば1銭も差押えされないことになります。

差押えがどこまで行われるかを一言で示すなら、生活保護を受けなければならなくなる寸前までは差押えられるということです。

借金を滞納して裁判所から支払督促の送達を受けた場合

金銭消費貸借などの約定を破り、そのために支払督促を受けた場合は、債権者が民事執行法による回収を視野に入れていることが考えられます。このケースでは、債権者側が債務者側の生活を考慮する必要がないため、国として民事執行法で歯止めをかけています。しかし、年金保険料の滞納による差押えと同じではありません。また、他の手段の有無や換価が容易かどうかも関係ありません。とはいえ、債権保全の役に立たない物を差押えるメリットは無に等しく、結局は預貯金を含む金銭や不動産、自動車などの高価な動産がメインとなります。

さて、支払督促を受けた結果の強制執行ということになれば、民事執行法に規定される差押禁止債権・動産が適用されます。債務者保護の基本的な考え方は国税徴収法と同じですが、前述のように債権者の立場が違うことによる差があります。

民事執行法第131条の規定で、差押禁止動産とされる食料や燃料は1ヶ月分です。国税徴収法の3ヶ月分より少なくなっていますが、その分、2ヶ月分の必要生活費相当額の金銭を差押禁止動産としています。もっとも、それだけの金銭を持っていればの話です。また、第152条に規定する差押禁止債権としての給与の差押禁止部分は、3/4となっています。一家4人で国税徴収法と同じ23万5000円を確保するには、元が31万3300円余でなくてはなりません。

自己破産を検討している人の場合

債務の返済が不可能な状況となって自己破産を検討しているケースでは、それ自体で差押えが行われる心配はありません。自己破産を検討している状況で差押えがあるとすれば、すでに支払を命じる判決を受けていたり、税金などを滞納していたりといった原因が考えられます。

気になるのは、自己破産を申立てた場合の差押えでしょうか。自己破産の申立てを知った債権者は債権の回収を急ぎたいところです。自己破産を申立てる経済状態では、差押えられるものといえば給与くらいしかないのが通例と考えられます。つまり、消費者金融などの債権者は給与の差押えにかかってくることがあります。

しかし、管財事件になると強制執行は失効しますので、以降の差押えはできなくなります。また、同時廃止事件になったら、執行の中止を申立てることで差押えを止めることが可能です。中止分は免責を得ることで回復できます。

※管財事件…一定以上の財産がある者が自己破産をする場合、破産管財人が選任されて財産が債権者に配当されます。この手続を行う破産事件を管財事件と呼びます。 ※同時廃止事件…持てる財産が上記の管財手続をする費用にも満たない場合は、破産手続を開始すると同時に廃止してしまいます。この扱いをする破産事件を同時廃止事件と呼びます。

国民年金保険料滞納と差し押さえの流れと回避方法

国民年金に加入している場合、期限までに保険料を納付しなければ、納付を促す催告状が発送されます。これにも応じなければ、電話による納付督励や訪問、呼出案内などに進みます。ちなみに、納付督励などの業務を請け負っているのは民間事業者です。そのため、詐欺師がなりすます可能性があります。聞いたことのない団体による電話や訪問には注意を払いましょう。ホンモノかどうかは、日本年金機構のホームページで確認が可能です。

悪質で所得が一定以上なら差し押さえ手続を進める

受託業者による徴収などでも解決できなかった場合で、一定の所得を得ているのに一向に納付する意思を見せないと判断されると次の段階に進みます。その一歩目が「最終催告状」です。所得があるかないかについては、市町村からの情報などを利用して確認しており、その結果で最終催告状を送付する対象を選別しています(実務では、各年度の行動計画に定められた所得以上を対象としています)。つまり、この書面が来るということは、年金保険料を払えるだけの所得があると評価されているわけです。

※平成29年度における強制徴収の対象となる基準

横の見出し 年間の所得金額 滞納した月数
基準1 350万円以上 7ヶ月以上となったとき
基準2 300万円から350万円未満 13ヶ月以上となったとき

この最終催告状は、発送日の10日以上先の日付を納付指定期限として発送され、引き続き納付督励が行われます。この段階で納付すれば差押えには進みません。納付指定期限を経過してしまうと、いよいよ来所通知書や督促状(こちらも発送日の10日以上先の日付が納付指定期限となっています)の発送へと進みます。また、連帯納付義務者(世帯主や配偶者)にも送付されます。

ここまでの手順を踏んだうえで、それでも納付がない場合に送られるのが「差押予告通知」です。つまり、あなたが差押予告通知を受け取ったのであれば、相当程度に悪質な滞納者だと判断されていることになります。

上表に示したとおり、滞納月数が7ヶ月になるまでは強制徴収として差押えがなされることはありません。また、実際の差押えが行われるには諸々の時間がかかります。滞納者が多ければ遅くなるものです。

強制徴収の回避策とは

上記のことから、国民年金保険料の滞納を半年以下にしておけば、差押えを回避することができることがわかります。しかし、払えるときに払うことで、7ヶ月分にならないようにしていても、手前まで来てしまえばその後は毎月納付する必要が生じます。

また、強制徴収の基準が下がることも考えられます。所得が低ければ差押えの心配はありませんが、故意に所得を下げるのもおかしな話です。

そこで、国民年金保険料の納付が厳しいときには、免除や納付猶予の制度を活用しましょう。勘違いしている人がいるようですが、国民年金の保険料は、税金などと同じで債務整理の対象にはならず、自己破産をしても帳消しにはなりません。

ちなみに、保険料免除には全額免除と一部免除があり、単身世帯で全額免除や納付猶予を受けられる目安は年間所得が57万円以下で、年収に換算すると122万円程度です。4人世帯なら162万円で、年収換算で257万円程度となります。

上記はあくまで目安ですので、免除や納付猶予を受けたい人は、市町村の担当窓口や年金事務所に相談してください。

支払督促からの差し押さえと強制執行を回避する方法

支払督促が送達されたからといって、それだけで差押えが行われるわけではありません。支払督促は債権者の一方的な申立てだけで発せられるものです。そのため、2週間以内に督促異議の申立てを行うことで、無意味なものとすることができます。但し、異議を申立てた場合、債権者があきらめない限り通常訴訟へ移行することになります。

放っておくと差し押さえになる支払督促

ここで異議を申立てずにいると、30日以内に仮執行宣言が申立てられ仮執行宣言付きの支払督促が送達されます。この段階では、執行停止の申立てによって差押えを阻止しなければ差押えされてしまう可能性があります。この支払督促にも異議を申立てる期間が2週間ありますが、それだけでは強制執行を回避できないのです。

つまり、最初の支払督促の段階で異議を出すことが重要です。放っておくと、直ぐにではないものの、それほど長くかからずに差押えになる可能性があります。通常訴訟に移行すれば、そこから差押えが実施されるまでにはある程度の時間があります。

差し押さえを回避したいなら弁護士に相談してみる

さて、支払督促に異議を申立てて通常訴訟に移行したとしましょう。請求されている債務が実在しているのであれば、負ける裁判であることは確実です。そうなれば、結局は強制執行の話になってしまいます。そもそも、訴訟の対応をひとりで行うもの容易ではありません。そうなる前に、弁護士に相談してみましょう。

同じ相談をするなら、支払督促の段階で相談することをおすすめします。その方が、労力や精神的な負担も軽く、経済的にも有利だからです。弁護士なら支払督促への適切な対応もできますし、借金が払えない現状の解決策も提案してくれます。それが債務整理です。債務整理は、借金を無理なく返済できるようにするもので、差押えを回避する有力な手段です。※自己破産は借金を帳消しにするために選びます。

借金の額や収入と生活の状況に応じて、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産と4種類ある債務整理のどれが適しているかを判断するにも弁護士のアドバイスが有効だといえます。また、利息制限法を超える利率で長く取引をしていた場合、過払い金があるかもしれません。そうなったら、差押えどころか、お金を返してもらう話にもなります。こうした面も踏まえて、専門家である弁護士に相談することが、最適な差押え対策の第一歩です。

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