「債務整理は弁護士と司法書士、どちらに依頼したほうがいい?」
「司法書士の方が安いって本当?」
債務整理の手続きの多くは弁護士と司法書士が行っています。
しかし、弁護士と司法書士ではそれぞれ依頼できる手続きの内容や費用に違いがあることをご存知でしょうか?
たとえば、司法書士の債務整理手続き費用は一般的に弁護士よりもやや安くなる反面、司法書士には依頼できない手続きもあります。
逆に、弁護士は司法書士より依頼できる手続きが多い分、費用は高めになります。
今回はそのような両者の違いについて、費用・手続きの両面から詳しく解説します。
債務整理にかかる費用は弁護士よりも司法書士の方が安い
弁護士も司法書士も、債務整理にかかる費用は事務所によって大きく異なります。
また依頼時に支払う着手金、債務整理が成功した場合に発生する成功報酬などの内訳も事務所によって大きく異なります。
費用面でのトラブルを防ぐためにも、依頼前に複数の事務所でかかる料金をチェックし、比較しながら検討するようにしましょう。
そのことを前提として、弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合の費用の違いについてご説明します。
債務整理(任意整理)の依頼料 ※当サイト調べ。都内10社平均
弁護士事務所:(着手金+成功報酬)5.4万円
司法書士事務所:(着手金+成功報酬)4.2万円
※※ほか過払い金などの発生により借金が減額された場合、報酬金(減額の5%~10%)が必要な場合があります。
当サイトが調べた範囲では、依頼時に支払う「着手金」および借金を減額できた際に払う「減額報酬」は、ともに司法書士に依頼したケースの方が安くなっていました。
一方、債務整理が成功した際に司法書士へ払う「成功報酬」はいずれも5万円以内の範囲であり、手続きに必要な手数料については実費を支払うケースが多いといえます。
この事実だけを見ると、「弁護士よりも司法書士に依頼したほうがいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、費用だけで依頼先を決めてしまうと後悔する可能性があります。弁護士と司法書士では、債務整理の手続きで「できること」が大きく違うからです。
次の項では、債務整理の手続きにおける弁護士と司法書士の違いについて詳しくご説明します。
司法書士と弁護士では「できること」が異なる
次は、弁護士と司法書士の業務範囲や、対応できる業務の違いについて見ていきましょう。
弁護士は、法律に関する業務全般を行うことが認められています。
一方で本来は不動産や会社などの登記を行う専門家である司法書士は、裁判所、検察庁、法務局に提出する書類の作成や提出代行など、法律に関する定められた分野のみが業務範囲となります。
したがって「弁護士には可能で司法書士には不可能な業務」が存在するのです。
ここからは、債務整理において司法書士ができる業務とできない業務に焦点を当てていきます。
【任意整理の場合】司法書士は1社からの借金の元金額が140万円以下
債務整理には主に、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。まずは、債務整理をした多くの人が選択している任意整理と司法書士の関係についてご説明します。
任意整理とは、債務者から依頼された弁護士や司法書士が、借金の債権者である金融会社と交渉を行い、借金減額を行う法的手続きです。従来、この業務は弁護士のみに認められていました。
しかし2003年の法改正により、「法務大臣認定司法書士」にも示談交渉権と簡易裁判所代理権が認められました。それにより、司法書士も条件付きながら任意整理業務ができるようになったのです。
司法書士に認められている任意整理は、「1社ごとの借金の元金額が140万円以内」のケース。つまり、1社ごとの借金の元金額が140万円を超えない場合には、司法書士に任意整理を依頼できるということです。
しかし、1社ごとの借金が140万円以内の場合でも、任意整理ができず「個人再生」や「自己破産」を選択せざるを得ないケースもあります。そうなると、司法書士には債務整理を依頼できません。
その理由については、次でご説明します。
【個人再生・自己破産の場合】司法書士は代理人になれない
司法書士が債務者の代理人として業務を担当できるのは、簡易裁判所での手続きまでです。地方裁判所を介する個人再生や自己破産では、書類の作成業務しか対応できません。
司法書士に依頼する場合、実際の手続きや債権者(お金を貸している人)との交渉、債権者集会や免責不許可事由を疑われた際のトラブル対応などは、債務者(お金を借りている人)本人が行う必要があります。
なお、「管財事件」と呼ばれる、借金の原因がギャンブルや浪費で、かつ20万円以上の財産がある自己破産の場合は、予納金が約50万円かかります。弁護士であれば「少額管財」といって予納金が20万円に抑えることが可能です。
司法書士に自己破産手続きを依頼する場合は、裁判所費用の負担もかなり重いことを覚えておかなければなりません。
もちろん、司法書士の(対応範囲内での)サポートによって精神的負担の軽減を図ることはできます。しかし、業務範囲が広い弁護士なら債務者の負担をより軽くできることが多くあります。
また、「管財事件」を「少額管財事件」にして裁判所費用を抑えることも可能なため、結果として弁護士費用が司法書士費用とあまり変わらなくなる場合もあります。
司法書士事務所を選ぶ基準
これまでの内容をふまえた上で、司法書士事務所を選ぶ基準をお伝えします。
1. 債務整理をメイン業務としており、実績が豊富
債務整理は代理人である専門家の交渉次第で、借金の減額幅が大きく変わります。そのため債務整理をメインに取り扱っており、実績が豊富な司法書士事務所を選ぶことは極めて重要です。まずは、事務所のWebサイトや電話で、債務整理の実績がどのくらいあるのかを確認してみましょう。
2. 費用について相談しやすく、金額にも納得できる
債務整理の費用は、事務所によって大きく異なります。費用についてはできる限り複数の事務所に相談し、その中から納得できる金額を提示した事務所を選びましょう。司法書士事務所によっては、初回相談料が無料で受け付けしているところもあります。まずはそのような事務所に連絡を取り、相談してみてください。
3. 相談への対応が親身で、説明も丁寧
債務者が抱えている不安な気持ちをくみ取り、親身に相談に乗ってくれる事務所がベストです。また、専門家ではない相手に対してわかりやすく債務整理の手続きの流れを説明してくれるかどうかも重要なポイントといえます。
4. 自宅から通いやすい場所に事務所がある
債務整理の手続きでは、何度も事務所に足を運ぶこともあります。そのため、遠かったりアクセスが悪かったりすると負担が大きくなるでしょう。自宅からのアクセスが良好で、通うのが苦にならない場所にある事務所を選ぶのが賢明です。
以上の4点を念頭に置いて司法書士事務所を選べば、より納得のいく形での解決が期待できるでしょう。
【まとめ】司法書士と弁護士の違いを理解した上で依頼先を決める
債務整理業務に関する費用は、弁護士よりも司法書士のほうが一般的にやや安いといえます。しかし、弁護士と司法書士ではできる業務の範囲が違うので要注意です。
債務整理における両者の最大の違いは、弁護士には債務整理の全業務を一任できる一方で、司法書士が対応できる業務には制限があることです。
司法書士が債務者の代理業務に対応できるのは、任意整理のみ。それも、債権者(金融機関)1社あたりの借金の元金額が140万円以内のケースに限られます。
それ以外の任意整理や、個人再生、自己破産の場合、司法書士にできるのは書類の作成のみで、その他の手続きはすべて債務者本人が行う必要があります。
一方、弁護士は司法書士よりも費用が高くなりますが、すべての債務整理において対応を任せられます。裁判所手続き費用の一部を軽減できるのもメリットです。
以上の違いを考慮に入れた上で、140万円を超える債権者がいない場合の任意整理では状況によって弁護士と司法書士のどちらかを選び、それ以外の任意整理や個人再生、自己破産の場合は弁護士を選ぶのが妥当な判断でしょう。
なお、債務整理の実績があるかどうかも重要な判断材料となります。弁護士や司法書士に債務整理を依頼する場合は、費用だけでなく、事務所の実績やスタッフの対応などを見ながらじっくり比較検討して選びましょう。